骨粗鬆症

骨粗鬆症とは

近年の日本は他国と比べて平均寿命が伸びており、高齢化が進行しています。2020年では、65歳以上の人口は国内の全人口の28.7%もいると報告されており、2040年には35.3%にもなると予測されています。
骨粗鬆症とは、骨がスカスカに脆くなって、骨折しやすくなる疾患です。骨の強度には「骨密度」と「骨質」が関わっており、骨粗鬆症の治療では、両方とも高めて骨折のリスクを減らしていくことが大切です。
国内にいる骨粗鬆症の患者様は現在、1300万人もいると報告されていますが、その中でも治療を受けているのはたったの20%で、およそ5人に1人とされています。発症しても症状が目立たないため、骨折をきっかけに発見される方も珍しくありません。
早いうちに予防することが重要ですので、痛みなどの自覚症状がない方でも以下の危険因子に当てはまっている場合は、受診するようにしましょう。

  • 喫煙者、アルコールをよく飲まれる方
  • 骨折を繰り返したことがある方
  • ご両親のいずれかが、大腿骨近位部(脚の付け根部分)を骨折している方
  • ステロイドを定期服用している、または過去に3ヶ月以上服用していた時期があった方
  • 骨粗鬆症の発症リスクを高める疾患など(糖尿病、甲状腺機能亢進症、関節リウマチなど)を抱えている方、45歳未満のうちに閉経を迎えた方

骨粗鬆症による骨折

 閉経を迎えた方の中には「身長が昔より低くなった」「猫背になった」「腰が痛い」といったお悩みを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。これらのトラブルはつい「もう年だから」と思われがちですが、実は加齢によるものとは限りません。自覚のない段階から骨粗鬆症を発症して「いつのまにか骨折」を起こしていることもあります。
実際に、若い頃(25歳ぐらい)の身長よりも4cm以上縮んだ女性は、骨折リスクが2倍以上も高まると指摘されています。「要介護状態」になる方の11.2%(およそ8人に1人)は「転倒・骨折をきっかけに要介護状態になった」と報告されています。
骨粗鬆症を引き起こすと骨折しやすくなる部位ができます。50~60歳の方ですと手首(橈骨:とうこつ)の骨折が増え、さらに年を重ねると、腕の付け根(上腕骨近位部)や背骨(胸椎・腰椎)の骨折が多くなります。そこからさらに年を重ねると、今度は脚の付け根(大腿骨近位部)の骨折が生じやすくなります。
脚の付け根部分が骨折するとほとんどの場合、手術を余儀なくされます。手術後でも機能障害が残り、歩行機能が今まで以上に衰える可能性も高まります。

骨粗鬆症の診断

問診や触診をはじめ、視診やX線検査、骨密度検査、血液検査などを実施します。

X線検査

圧迫骨折の有無や、骨の変形・椎間板の変性による背骨の変形がないかをチェックします。

骨密度測定装置(DEXA法)による骨密度検査

骨密度を測る検査で、当院では、「デキサ(DEXA:Dual Energy X-ray Absorptiometry)法」という、全身の骨密度が測れる方法で実施します。2種類のX線を活用する「二重エネルギーX線吸収測定法」で、透過度を解析することで骨密度を測ります。
検査時間は約5分で、被ばくリスクも誤差も少なく済む検査ですので、骨密度測定の標準方法として普及しています。
当院が導入した機器では、腰椎と大腿骨近位部(太ももの付け根部分)の骨密度が測れます。年間新規患者数が30万人~1000万人いる「腰椎圧迫骨折」と、年間手術件数が30万件とされる「大腿骨近位部骨折」がありますが、両方とも発症すると、歩行機能と体力が下がってしまいます。要介護リスクを上昇させないよう、当院では寝たきりリスクが高くなる部位の骨密度を測ってから、予防・治療方針を提案します。

血液検査

現代の骨粗鬆症の治療で「骨代謝マーカー」は重要な検査です。骨代謝マーカーを測定することで、骨の新陳代謝(骨代謝)の異常が見つけ出せます。
その場合は結果に合わせて、骨の状態に合わせた薬を処方します。近年では飲み薬よりも効果が期待されている、皮下注射や点滴注射の薬も登場しています。

骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症を治療するには、食習慣と運動、薬物療法が重要です。

食事療法

栄養バランスの整った食事を心がけ、塩分や脂肪分を摂りすぎないようにしましょう。カルシウムの摂取量は1日650~800mg以上を心がけ、ビタミンDやビタミンKも摂取しましょう。カルシウムをあまり摂らずにいると、骨粗鬆症のリスクが上昇したり、血管などの組織にカルシウムが多く流れて、動脈硬化を引き起こす可能性があります。骨粗鬆症と動脈硬化も予防するためにも、骨代謝において重要なビタミンDやビタミンKを摂取することが大事です。
厳しい食事制限を行う必要がありませんが、アルコールやカフェインなどの摂りすぎには注意しましょう。アルコールの摂取量が多いとカルシウムの吸収が阻害され、尿と一緒にカルシウムが体外へ出てしまいます。カフェインも同じように、カルシウムの排泄量が多くなるので摂取量には要注意です。

カルシウム

牛乳や乳製品、小魚、大豆・大豆製品、緑黄色野菜

ビタミンD

サケやウナギ、サンマなどの魚類、キノコ類

ビタミンK

納豆、フルーツ、緑色野菜

運動療法

運動療法も、骨粗鬆症の治療で不可欠です。運動を通して骨に負荷をかけると骨密度が増え、骨が丈夫になります。筋力トレーニングも行うとより身体が支えやすくなり、バランス感覚が高められるので、転倒リスクの軽減が期待できます。
まずは無理なく、継続しやすい範囲から取り組んでいただくことが大切です。

薬物療法

患者様の容態や持病、検査の結果などを考慮して、薬を処方するかどうかを決定します。骨粗鬆症の治療ではよく骨吸収抑制薬が処方されていますが、骨密度を高める薬剤を使うこともあります。患者様によっては副作用が現れたり(効きすぎる)、効かなかったりすることもあるため、必ず効果が得られるとは限りません。定期的に受診して検査を受けていただきながら、薬を調整することが重要です。

骨吸収抑制薬 ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体製剤、SERM製剤
骨形成促進薬 抗スクレロスチン抗体製剤、PTH(副甲状腺ホルモン)製剤
栄養補助薬 ビタミンD製剤など

よくある質問

骨粗鬆症を発症しやすい体質ってありますか?

ご両親のいずれかが骨粗鬆症を引き起こしている方は、そうでない方よりも骨粗鬆症になりやすいので注意しましょう。 もちろん遺伝も関与していますが、ご家族の方とは食事の好き嫌いや運動量などが似やすくなるため、そういった部分も影響しています。痩せ体型の方や早期閉経だった方も、骨粗鬆症になりやすい傾向が強いです。 特に女性は、閉経を迎えるまでは女性ホルモンの機能によって骨密度が維持されましたが、閉経後になるとホルモン量が減っていくため、骨も老化していきます。若い頃に過激な減量を行った方も骨粗鬆症を発症しやすいです。

骨粗鬆症の検査を受けるタイミングってありますか?

女性は閉経を迎えた後に骨密度が減っていきます。50歳を超えてから一度、骨密度測定を受けることをお勧めします。

痛みがなくても治療は続けた方が良いのでしょうか?

骨粗鬆症は発症しても、痛みなどの自覚症状が起こりません。骨折をきっかけに痛みが現れます。骨折を治癒していけば痛みは徐々に改善されますが、骨粗鬆症そのものが治ったわけではありません。骨折するリスクが1度目よりも高くなっている状態ですので、一回でも骨折した方は、治療を中断せずに継続しましょう。